初めての製品デザイン開発に取り組む方と、それを支える皆さまのための


(5)モノづくりにおける“コンセプト”とは

モノの役割は「誰かの喜びをつくること」

 「モノづくりにはコンセプトが大切だ」とよく言われます。コンセプトは言わば、モノづくりやデザインの目標だからです。では「コンセプト」とは具体的には何なのでしょう?
 モノは言わずもがな、誰かに喜びをもたらすという役割を背負っています。モノのコンセプトも、モノではなくお客さんを中心に据えて考えてみましょう。

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 モノによって喜びがもたらされる前のお客さんの状態は、上の図のように「今の○○、 ツラいんだよな~」といった形で、心の中に既に不満や欲求が明確になっている場合と、「今の○○も悪くはないんだけど、 ちょっと飽きたかな~」といったように特に不満などが明確化されていない場合の二通りがあります。いずれにせよ、これらの潜在化・顕在化している不満や欲求を捉えた上で、これから作るモノがお客さんにどんな喜びをもたらすことになるのか、このあたりをしっかり定義することが、モノのデザインに入っていく前にはとても大切な仕事になります。

モノのコンセプトは「誰のための、何のための、何?」

 上で述べたように、モノのコンセプトとは、これから作ろうとしているモノが「誰に対して、どんな喜びをもたらす、どんなモノ」なのかを表した言葉です。それをもう少し具体的に記述するために、次の5つの要素でモノのコンセプトを記述する方法をご提案します。

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① ターゲット

 誰がそのモノを使うのか。誰がそのモノを購入するのか。

② 状況

 ターゲットユーザが今どんな状況において、どんな不満や欲求を持っているのか。今何に困っているのか、どんな不本意な状況にあるのか。満たされていないことはなにか。

③ ベネフィット

 これからつくるモノにより、ターゲットユーザがどのような喜びを得られるのか。どんな楽しさ、便利さを得られるのか。これから作るモノの何に「スゴい!」と感じるのか。

④ 製品アイデア

 具体的にどのような製品アイデアにより、ベネフィットを実現するのか。これから作るモノの特徴的な機能は何なのか。それをどう実現するのか。我が社ならではの部分はどこか。

⑤ 競合優位

 作ろうとするモノは、ターゲットユーザが購入時に比較することになるライバル商品より優れているか。具体的にどこがどれだけ優れているのか。

 以上の五つの項目を、まずはしっかり考えて言葉にしてみましょう。