(1)デザインの成否はデザイン依頼の時点で決まる
デザインについての誤解
中小企業や産学官プロジェクトからの依頼で取り組むモノのデザインでは、うまく成果に結びつかないケースも多くあります。
それは、「1.ものづくりのゴールと進め方」で述べた【戦略づくり】段階での煮詰め不足を、デザイナーによる表面的な色・形の調整だけで帳尻を合わせられるのではないかという、依頼者自身の“デザインへの過剰な期待”や、“いきなりスタイリング”に入ろうという焦りがそもそもの原因となっていることも多々あります。
「1.ものづくりのゴールと進め方」でも述べたように、売れるモノづくりはデザインだけではなしえません。また、デザインは何もないところから突如売れるモノを創り出せる魔法の杖でもありません。事前の段取りや準備の善し悪しで成否が決まるという意味では、他のビジネスツールとなんら変わらない一つの思考の道具であり、一つの思考の技術に過ぎません。
「デザイン」は誰もが使える“思考の技術”
その一方で、前段階での適切な準備のもとに正しく使えば、デザインはお客さんの喜びを創出する、全く新しい価値を持ったモノを生みだし、その結果としてとても大きな果実をもたらしうる技術であるのも間違いありません。
モノのデザインを依頼するに当たっては、依頼者であるあなたも、デザインの役割や価値、限界などを正しく理解し、さらにご自身の役割や心構えをきちんと理解した上で臨まれることが、デザイナーとともにお客さんの喜びを創り出し、長く売れていくブランド力の高いモノや事業を生み出すためにはとても大事なこととなります。
このページ以降しばらくは、デザインの依頼者となる作り手の立場から、モノのデザインを社外デザイナーに依頼する際の心構えを提案します。