(8)こんな“良くない思い込み”に気をつけよう
「良いモノを作れば売れる」、「ユーザーが欲しいモノを作れば売れる」って、ホント?
新商品開発の会議などで、上のような言葉だけでなく、例えば「お客さんがこう言ってるから、その通りに作らなきゃ」とか、「世話になっている先生がこう言ってるからその通りに作らなきゃ」といったような言葉を耳にすることはないでしょうか。それらが必ずしも間違っているとは言い切れませんが、それらの言葉には大抵、良くない思い込みが混じっているように思われます。
下の表に、そんな言葉をまとめてみました。「あるある!」とうなずいてしまった方も、明日からはもう大丈夫ですね!
こんな言葉を使いがちでは? |
←こんな良くない思い込み が隠れているかも? |
←こう考えれば大丈夫! |
良いモノを作れば売れる! | 作り手の思う良いモノと、使い手にとっての良いモノの間に隔たりがあると、欲しいと思ってもらえるモノにはなりません。 |
モノだけを見るのではなく、使い手がどう使うか、使用・所有を通じてどう喜ぶかを考えましょう。 |
使い手から見て良いモノができても、それをきちんと伝えて欲しいと思わせなければ売れません。 | モノだけでなく、その良さを伝えるためのネーミングやパッケージ、パンフレットといったコミュニケーションデザインも、早い段階から意識しましょう。 | |
立派な先生の作ったアイデアだから大丈夫! | “立派な先生”は研究成果の正しさは保証してくれますが、それが売れるモノになるということまでは保証してくれません。 |
売れるかどうかは「お客さんが買うかどうか」です。多大な投資をして商品開発していくべきアイデアかどうかは他人任せにせず、自分の責任でしっかり見極めましょう。 |
特許も取れたくらい素晴らしいアイデアだから大丈夫! |
特許が取れたことと、使い手がその商品を「欲しい!」と思うことには何のつながりもありません。 使い手を喜ばせられない筋の悪いアイデアを早々に権利化してしまうと、そのアイデアに固執せざるを得なくなり、結果として多大な投資を無駄にします。 |
知財もデザインと同様に長期的優位構築の手段なので、戦略的な活用が大切です。権利化のタイミングに気をつけましょう。 |
お客さんの言う通りに作っているから大丈夫! | モノは誰かの喜びのためにあります。プレゼントをすることにも似ています。
「これが欲しかった!」と言われる、使い手が期待する以上のモノは、使い手が欲しいと言ったモノをそのまま作るだけではつくれません。 |
使い手が口に出して言うことの裏にある本音を推理し、本質的な問題やその解決策を考え、使い手の期待を越えるアイデアをつくることが、商品開発では重要です。 |
機能試作機を納得いくまで作り込んでから、ユーザテストをしよう | いきなり多大な投資をして立派な試作機を作り込んでしまうと後に引けなくなり、ユーザテストの結果が悪かったとしても大きな路線変更ができなくなってしまいます。 | 早期にラフでクイックな試作と、使い手の参加による評価・検証を繰り返し、早い段階で“失敗”をしつくしましょう。自分のアイデアを愛しすぎるのは失敗のもとです。 |
試作機の改良を重ねていけばどんどん良いモノになるから大丈夫! | 使い手の喜びが不在のまま、部分部分の最適化をいくら繰り返しても、売れるモノを作る上では何の意味もありません。 | 企画・コンセプトをしっかり煮詰めた上で、「長期的優位の構築」という大きな目的に照らして、モノの部分部分を眺め、考えましょう。 |
これだけ時間を掛けて頑張って開発したのだから大丈夫! |
使い手にとって「欲しい」と思えるモノであれば、作り手の頑張りは共感を生むストーリーとなり得ます。 しかし「欲しい」と思えないモノにいくら時間や労力が注がれたといっても、それは使い手には何の意味も持ちません。 |
売れるかどうかは「お客さんが買うかどうか」です。作り手が投じた経営資源(人・モノ・カネ・時間など)とは切り離して、冷静に見極めましょう。 |
商品開発というのは、時間がかかるものだし、売れるかどうかもわからない | 「戦略づくり→モノのつくりこみ→事業化」という手順を意識しないと、モグラ叩き的な開発になりがちです。それではいくらやっても終わらないし、売れるモノにもなりません。 | 商品開発の源流に当たる「戦略づくり」の部分がしっかり煮詰まっていれば、無駄な時間も抑えられ、全く見当外れのモノを作ってしまう危険も避けられます。デザインブリーフをご活用ください。 |