初めての製品デザイン開発に取り組む方と、それを支える皆さまのための


(2)依頼前の準備をしよう

① 依頼内容を整理する

 ドラッカー曰く、企業の目的は“顧客の創造”です。なので、モノを開発する場合も、顧客(ユーザ)は誰なのか、その顧客に対してどんなモノで、どう喜ばせるのかといった製品のコンセプトはもちろん、開発するモノをどう販売して、どの程度の収益を得ていくのかという事業のイメージも大切です。
 また、そもそもどのような思いからこのモノ開発に臨むのか。誰を責任者とするどのような体制で製品開発に臨むのか。デザイン開発にどの程度の期間や費用を見込んでいるのか。これらのことについても、可能な限り明確なビジョンを持っておきましょう。
 こうしたデザインを依頼するに当たって、デザイナーやコーディネーターに伝えるべき情報を整理するためのガイドとして、次のページでご紹介するデザインブリーフ書式をご活用ください。依頼時点では、記入できない項目もあるかもしれませんが、まずはデザインの依頼者として現在考えていることを、このツールを使って整理してみましょう。

② 依頼者・デザイナー・コーディネーターの三者でパーティを組む

 ビギナー依頼者とデザイナーの間では、デザインに対する認識に大きな違いがあります。また、依頼者から見れば、モノのデザイン依頼を支援してくれる機会や情報に恵まれないため、自発的にデザイナーを探し、デザイン業務を依頼してものづくりデザインをやっていくことは、実際にはとても難しいことです。
 依頼者とデザイナーをつなぎ、ともに走る伴走者である私たち公設試を始めとする“デザインコーディネーター”を積極的に活用してください。

 また、中小企業からのモノのデザイン依頼に対応できるデザイナーは、北海道内にはまだ少ないのが現状です。モノのデザインを担えるデザイナーをお探しの場合は、まずは筆者のいる道総研工業試験場・デザイングループへご相談ください。

③ 着手前に“話の整理”をみっちりやろう

 ビギナー依頼者からの依頼は、デザイン以外の問題を抱えていることも多く、これらの問題を放置したままデザインプロジェクトに入ると、うまくデザイン業務が進んで行かなくなります。
 だからモノのデザインを成功させるためには、デザインに入る前の“話の整理”が非常に重要です。この“話の整理“におけるテーマは、大きくくくると次の三つになります。

 A.どんな体制で製品開発・デザイン開発を進めるのか【チーム】
 B.何のための、どんなモノをデザインするのか?【目標】
 C.どうデザインをしていくのか?【行程】

 これらを整理しておくことにより、依頼者はデザイナーの提案するデザイン案などのアイデアに対して、正しい判断ができるようになります。また、デザイナーは迷うことなくモノのスタイリングのデザインを進めることができるようになります。

 これらの“話の整理”を、次のページでご紹介する「デザインブリーフ書式」などを活用して、デザイナー・コーディネーター・依頼者の三者でともに進めていきましょう。